細胞が必要なときだけ遺伝子を働かせる仕組みの一つが「オペロン」です。中でもトリプトファンオペロンは、「抑制型オペロン」の代表例として高校生物でよく出題されます。トリプトファンの有無によって転写が調整される仕組みを理解することは、遺伝子発現の調節を学ぶうえで重要です。本記事では、トリプトファンオペロンの構造や制御の流れ、lacオペロンとの違いも含めて、図解付きでわかりやすく解説します。
オペロン
オペロンとは、ある遺伝子の発現に関係する遺伝子領域のことです。オペロンが一体となって機能することで、さまざまな遺伝子の発現が調節されています。
このオペロン説を提唱したのが、ジャコブとモノーです。有名なオペロン説として、ラクトースオペロン、トリプトファンオペロンなどがあります。今回は抑制型のトリプトファンオペロンを学習します。トリプトファンの有無によってどのように遺伝子発現が調節されているか確認しましょう。
トリプトファンオペロン
原核生物の大腸菌は、培地にトリプトファンというアミノ酸が含まれていないときはトリプトファン合成酵素を生成し、自らトリプトファンを合成していますが、培地にトリプトファンがある場合にはトリプトファン合成酵素を生成しなくなり、トリプトファンの合成がストップします。
DNAの転写領域に、トリプトファン合成酵素を指定する構造遺伝子があります。この構造遺伝子がRNAポリメラーゼによって転写されることで、mRNAが合成され、それが翻訳されることでトリプトファン合成酵素がつくりだされます。
ここでは、トリプトファンオペロンが機能しており、次のような反応が起こり、トリプトファン合成酵素の生成が支配されています。
トリプトファンが培地に含まれていない場合

調節遺伝子領域が転写され、リプレッサーが不活性化しているアポリプレッサーが合成されていますが、アポリプレッサーは不活性なので、オペレーターに結合できず、RNAポリメラーゼがプロモーターへ結合することを抑制できません。
そのためRNAポリメラーゼによって構造遺伝子が転写され、トリプトファン合成酵素が生成されています。
トリプトファンが培地に含まれている場合

培地にトリプトファンを添加すると、トリプトファンがアポリプレッサーと結合し活性化しリプレッサーになります。リプレッサーは、オペレーターに結合できるので、RNAポリメラーゼがプロモーターに結合できなくなり、構造遺伝子の転写が抑制されます。
この結果、トリプトファン合成酵素の生成が抑制されます。このように、構造遺伝子やその発現調節に関係する遺伝子の領域をオペロンといいます。
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