体液性免疫では抗原抗体反応が起こりました。抗原を不活性にする抗体についてもっと詳しく見ていきましょう。
抗体は免疫グロブリンでできている
抗体は、免疫グロブリンというタンパク質でできていて、4本のペプチド鎖で構成される左右対称な構造になっています。
4本のポリペプチド鎖のうち2本が長く、もう2本は短くなっている。
- H鎖…Heavy chain、長いポリペプチド鎖
- L鎖…Light chain、短いポリペプチド鎖
H鎖とL鎖はジスルフィド結合(S-S結合)によって結合しています。抗体の先端部分(黄色の部分)は、抗体の種類によってアミノ酸の配列が異なっていて、この先端部分を可変部といい特定の抗原と結合できるようになっています。それ以外の部分は定常部(不変部)といいます。
抗体のはたらき
抗体のはたらきは、獲得免疫の体液性免疫で確認済みですが、もう一度おさらいしておきましょう。
- ❶抗原に結合し、マクロファージや好中球による食作用を促進する。
- ❷ウイルスや毒素などと結合し、感染力や毒性を失わせる。
抗体の種類
抗体(免疫グロブリン)には、分子量やはたらく場所や時期の違いで次の5種類が存在します。すべて基本的な形はY字型をしています。
- IgG…血液中に最も多く含まれる抗体
- IgE…喘息(ぜんそく)や花粉症などのアレルギーを起こす抗体
- IgA…粘膜などで細菌やウイルス感染を予防する抗体
- IgM…細菌やウイルスに感染したとき最初に作られる抗体
- IgD…まだ役割は解明されていません
入試ではIgGとIgEを覚えておけば十分でしょう。
抗体の多様性
抗体は可変部の構造の違いで、その形は無数といえるほど存在します。これは、抗体を産生するB細胞が成熟する際に抗体遺伝子の再構成が行われるためです。1987年にノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進さんによって解明されました。
抗体遺伝子の再構成
未熟なB細胞には、抗体をつくるための遺伝子の断片が多数存在し、グループを形成しています。H鎖の可変部を決定する遺伝子は、染色体上にV、D、Jとよばれる3つの断片群に分かれて存在しており、L鎖の可変部を決定する遺伝子は、V、Jの2つの断片群に分かれて存在します。
B細胞が成熟するときに、それぞれのグループから遺伝子断片が1つずつ選択されて抗体遺伝子の再構成が起こるのです。
可変部の遺伝子の組合せの計算
可変部を構成する遺伝子の組合せが何通りになるかを求めさせる計算問題です。単純に掛け算で求めることができます。
[問題]H鎖のV、D、Jの各遺伝子断片が400種類、25種類、6種類、L鎖のV、Jの各遺伝子断片が200種類、5種類あるとすると、可変部の遺伝子の組合せは何通りになるか。
[解答]H鎖の遺伝子…400×25×6=60000
L鎖の遺伝子…200×5=1000
したがって、可変部の遺伝子の組合せは
60000×1000=60000000通り
コメント