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【化学基礎】混合物の分離「ろ過・蒸留・分留・再結晶・昇華・抽出・クロマトグラフィー」

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2種類以上の物質が混ざっているものを混合物といいました。今日は、混合物の分け方である「分離」について学習します。

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混合物の分離・精製

物質の性質の違いを利用して、混合物から純物質をとり出す操作を「分離」といいます。また、分離した物質から不純物をとり除いて、物質の純度を高める操作を「精製」といいます。

分離の方法には、以下で紹介する7つの方法がありますので、どのような性質の違いを利用して分離を行っているのかをしっかりと確認してください。

ろ過

液体とその液体に溶けていない固体の混合物を、ろ紙などを使って分離する操作をろ過といいます。液体はろ紙の穴を通過できますが、ろ紙の穴よりも粒が大きいものは通過できずにろ紙上に残るというしくみです。

ろ過のポイント

ろ過の注意点は次の3点です。

  1. 液体をろうとに注ぐとき、ガラス棒を伝わらせながら少しずつ注ぐ。
  2. ろ紙は溶媒で湿らせろうとに密着させる。
  3. ろうとの先端のとがった方を、ビーカーの内壁につける。

ろ過を行うことで、泥水を泥と水に分離したり、水溶液中に残った結晶をとり除くことができます。

蒸留

液体と他の物質の混合物を加熱し、発生した気体を冷やして再び液体にし、混合物を分離する方法を蒸留といいます。混合物中の物質の沸点の違いを利用して物質を分離することができます。

リービッヒ冷却器での蒸留

リービッヒ冷却器を使った蒸留でポイントを説明しておきます。

  1. ふきこぼれを防ぐため、枝付きフラスコの液量は2分の1以下にする。
  2. 突沸を防ぐため、沸騰石を入れる。
  3. 出てきた気体の温度をはかるため、温度計の感部は枝の部分に設置する。
  4. 冷却水はリービッヒ冷却器の下の口から上の口に流す。
  5. 三角フラスコとアダプターの接合部を密栓しない。

蒸留により、水とエタノールの混合物からエタノールを分離したり、食塩水から水を分離したりすることができます。

分留(分別蒸留)

2種類以上の液体の混合物を蒸留によってそれぞれの成分に分離する操作を分留(分別蒸留)といいます。蒸留の発展バージョンだと考えてもらって結構です。例えばガソリンですが、石油を分留することで、重油・軽油・灯油・ナフサ(粗製ガソリン)・石油ガスなどに分離することができます。

分留は、次の2つを覚えておけば十分でしょう。

  • 石油⇒重油、軽油、灯油、ナフサ(粗製ガソリン)、石油ガスに分離
  • 液体空気⇒窒素、アルゴン、酸素などに分離

再結晶

温度による溶解度の差を利用して、少量の不純物を含む固体から不純物をとり除く操作を再結晶といいます。溶解度とは、100gの水に溶ける物質の限度量のことでした。温度によって溶解度は大きく変化する物質とそうでない物質があります。この溶解度の違いを利用して物質を分離します。また、ある物質の中に少量の違う物質が混ざった場合などでも、再結晶することで、少量の物質を取り除くことができます。

再結晶により結晶化した物質は、ろ過によりとり出すことが可能になります。

昇華

物質の中には昇華性を示す物質があります。昇華とは、固体が液体を経ずにいきなり気体になる状態変化です。この性質を利用して、混合物を加熱して固体を気体にし、冷やして固体としてとり出す操作を昇華(昇華法)といいます。

昇華法

上の図の場合、昇華性があるヨウ素と、昇華性がない塩化ナトリウムを昇華法により分離しています。ヨウ素と塩化ナトリウムの混合物を加熱すると、ヨウ素のみが気体となり、上の冷却水で冷やされ再び固体のヨウ素になっています。

昇華法で分離できる物質には、昇華性があるという特徴があります。次の3つを覚えておけば十分でしょう。

  • ヨウ素I₂…うがい薬などに利用
  • ナフタレンC₁₀H₈…防虫剤などに利用
  • ドライアイスCO₂…二酸化炭素が固体になったもの

抽出

混合物に特定の物質だけを溶かす溶媒を加えて分離する操作を、抽出といいます。難しく聞こえますが、水という溶媒にコーヒーの苦み成分や香り成分を溶かし出すことも抽出の一つです。抽出は分液ろうとを使って行われることが多いようです。

分液漏斗での抽出

ヨウ素ヨウ化カリウム水溶液(ヨウ素とヨウ化カリウムの混合物)に、ヘキサンというガソリンのようなもの混ぜて振ると、ヘキサンに溶けるヨウ素と、ヘキサンに溶けないヨウ化カリウムに分離することができます。

抽出の具体例として、次のものを覚えておけばいいでしょう。ヘキサンなどの油に溶けやすいものが出題されます。

  • ヨウ素溶液(ヨウ素・エタノール・水の混合物)⇒ヨウ素をヘキサンに溶かし出す。
  • ヨウ素ヨウ化カリウム水溶液⇒ヨウ素をヘキサンに溶かし出す。
  • 臭素水⇒臭素をベンゼン(油)に溶かし出す。
  • コーヒーや緑茶など

クロマトグラフィー

紙などへの吸着力(付着しやすさ)の違いを利用して混合物を分離する方法をクロマトグラフィーといいます。ろ紙を使うクロマトグラフィーをペーパークロマトグラフィー、シリカゲルなどの吸着剤をガラス管に入れて行うカラムクロマトグラフィーなどがあります。

ペーパークロマトグラフィー

黒インキをしみこませたろ紙の下端を水につけると、水がろ紙にしみこんで上昇し、黒インキをさまざまな色に分かれさせます。これは、インキの中の物質のろ紙への吸着力が、それぞれ異なるからです。生物の実験で光合成色素のクロロフィルやカロテンなどを分けるときにクロマトグラフィーは利用されています。

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「混合物の分離」練習問題

:次の混合物から( )内の物質をとり出す方法として適当な操作方法を【操作】の中から、その原理を【原理】の中から一つずつ選べ。
(1)砂を含んだヨウ素(ヨウ素)
(2)食塩水(食塩)
(3)液体空気(窒素)
(4)海水(水)
(5)ヨウ素ヨウ化カリウム水溶液(ヨウ素)
(6)砂の混じった水(砂)
(7)ホウレンソウの葉(クロロフィルa)
【操作】
(ア)ろ過 (イ)蒸留 (ウ)分留 (エ)再結晶 (オ)昇華
(カ)抽出 (キ)蒸発 (ク)クロマトグラフィー
【原理】
(a)蒸発しやすい物質をすべて除き、固体だけを残す。
(b)液体を加熱して気体にし、冷やして再び液体に戻す。
(c)適当な溶媒に溶けやすい物質のみとり出す。
(d)適当な溶媒に溶かし、ろ紙などへの吸着力の差を利用する。
(e)水への溶解性と粒子の大きさを利用する。
(f)沸点が異なる2種類以上の液体の混合物から、沸点の低い物質をとり出す。
(g)加熱により、固体から直接気体に変化しやすい物質をとり出す。

「混合物の分離」練習問題 解答


(1)(オ)、(g)
(2)(キ)、(a)
(3)(ウ)、(f)
(4)(イ)、(b)
(5)(カ)、(c)
(6)(ア)、(e)
(7)(ク)、(d)

化学
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