化学進化により、無機物から有機物がつくり出されました。この後はいよいよ生命の誕生です。今回は、生命の誕生と遺伝情報を担う物質が、RNAからDNAへ変化していく流れを確認していきます。
生命の誕生
化学進化によって有機物が生成され蓄積した原始の海は、「原始スープ」とよばれました。この原始スープの海から生物が誕生するためには次の3つの能力が必要になります。
- 代謝を行う能力
- 膜の形成
- 自己複製能力
生物が自律的に生きるためには、秩序正しい物質の代謝が必要です。遺伝情報に基づき、多様なタンパク質が合成され、触媒として秩序だった代謝の制御が可能になっていきます。
また、現在の生物には、主にリン脂質二重層からなる細胞膜が存在します。この膜の内部にタンパク質や核酸が蓄積することで代謝の効率が上がっていき、やがて選択的透過性をもつ複雑な細胞膜ができていったと考えられています。
そして原始海洋の中で、簡単なヌクレオチド鎖とペプチド鎖の間で互いに生成を助け合うしくみができ、それがもととなりDNAとタンパク質による自己複製能力が確立していったと推測されています。
有機物から生物が誕生するために必要なもの
・代謝を行う能力
・膜の形成
・自己複製能力
RNAワールドからDNAワールドへ
現在の生物は、DNAが遺伝情報の保持や複製を担い、タンパク質が代謝の触媒作用を行っています。このような生物の世界をDNAワールドといいます。
これに対し、DNAがまだ存在せず、RNAだけで遺伝情報の保持や複製、代謝の触媒作用を行う生物の世界をRNAワールドといいます。
RNAワールドからDNAワールドへの変化は次のような過程で進んだのではないかと考えられています。
- RNAが遺伝情報の保持も触媒作用も担う
遺伝情報の保持・代謝の触媒の両方のはたらきをもつRNAをリボザイムという。
↓ - RNAが遺伝情報の保持を、タンパク質が触媒作用を担う
↓ - DNAが遺伝情報の保持を、タンパク質が触媒作用を担う
・RNAワールド…RNAが遺伝情報の保持と触媒作用をもつ生物の世界
・DNAワールド…DNAが遺伝情報の保持、タンパク質が触媒作用をもつ生物の世界
・リボザイム…遺伝情報の保持・代謝の触媒の両方のはたらきをもつRNA
最古の生物(最古の化石)
現在、最古の化石とされているのは約35億年前の西オーストラリアの地層から発見されたもので、その地層は光が届かない海洋底で堆積したものと推定された。したがって、最古の生物は熱水噴出孔周辺に生息していた化学合成細菌ではないかと考えられています。
また、グリーンランドの約38億年前の地層からは、生物を構成していた炭素の痕跡も発見されていることから、生物はそれ以前の約40億年前までには誕生していたのではないかと推測されています。
・最古の化石…約35億年前の化学合成細菌?
・今から約40億年前までに生物が誕生した
自然発生説の否定
実は17世紀の中ごろまでは、生物は親から生まれるとともに、ある種の生物は自然に発生するものと信じられていました。この考えを自然発生説といいます。
しかし、19世紀の後半になると、パスツールが自然発生説を完全に否定する実験を行いました。それは、空気中の微生物が入らないようにした実験で、この実験で自然に生物が発生しないことが確かめられています。これまでの実験で自然に生物が発生したと考えられていたのは、空気中の微生物が原因であったとわかったのですね。
・自然発生説…ある種の生物は自然に発生する
・パスツール…空気中の微生物が入らないようにした実験で自然発生説を否定
今回は、有機物から生命の誕生まで学習しました。この後、生物がどのように進化し、原核生物から真核生物へ、また陸上生活がいつごろできるようになったのかは、次回の講義で説明します。
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