植物が体内でアミノ酸やたんぱく質などの有機窒素化合物を合成するためには、「窒素同化」と呼ばれる過程が欠かせません。窒素同化とは、硝酸イオンやアンモニウムイオンなどの無機窒素化合物を取り込み、有機化合物へと変換する反応のことを指します。大学入試では、硝酸還元酵素やグルタミン合成酵素の働き、アンモニアの取り込み経路などが頻出のポイントです。本記事では、植物がどのようにして窒素を有効活用し、有機窒素化合物を合成しているのかを、反応式やキーワードとともにわかりやすく解説します。
窒素同化とは?
窒素固定によって、空気中の窒素N2が土壌中などに固定されることは学習しました。窒素固定細菌である根粒菌や、アゾトバクターやクロストリジウム、ネンジュモなどが窒素固定を行っていました。
その後は、植物が窒素固定によってつくられた、アンモニウムイオンNH4+や硝酸イオンNO3–などを使って有機窒素化合物をつくりだすはたらきを「窒素同化」といいます。
窒素同化は次の手順で行われます。
- 窒素固定
根粒菌やアゾトバクター、クロストリジウムのはたらき - 硝化
亜硝酸菌や硝酸菌のはたらき - 硝酸イオンの還元
植物が行う - 窒素同化
植物が有機窒素化合物を合成
硝化
植物が窒素固定を行うには、まず、硝化菌による硝化が必要になります。亜硝酸菌や硝化菌のはたらきによって、土壌中のアンモニウムイオンNH4+は亜硝酸イオンNO2–、さらには硝酸イオンNO3–になります。
硝化菌は化学合成を行う細菌でしたね。植物はこの硝酸イオンを取り入れ窒素固定に利用します。植物の中には、アンモニウムイオンをNH4+を直接吸収し利用するものもいますが、多くは硝化菌がつくりだした硝酸イオンNO3–を利用しています。
硝酸イオンの還元
植物は、根から窒素化合物を硝酸イオンNO3–の形で吸収します。硝酸イオンは植物の細胞内で次のように還元されます。
- 硝酸イオンNO3–→亜硝酸イオンNO2–
- 亜硝酸イオンNO2–→アンモニウムイオンNH4+
還元してできたアンモニウムイオンを有機酸と反応させ、アミノ酸が合成されます。
窒素同化
窒素同化でアミノ酸が合成される様子は次の通りです。

- グルタミン合成酵素のはたらきで、アンモニウムイオンNH4+とグルタミン酸が反応してグルタミン酸が合成される。このときATPのエネルギーが必要になります。
- グルタミン酸合成酵素のはたらきで、生じたグルタミンと有機酸の一種であるケトグルタル酸が反応し、グルタミンもケトグルタル酸もグルタミン酸になります。
- 生じたグルタミン酸に含まれるアミノ基が、アミノ基移転酵素のはたらきで色んな種類の有機酸に移転され、色んな種類のアミノ酸が合成されます。
生じたアミノ酸は、ペプチド結合しタンパク質に合成に利用されます。その他にもアミノ酸は核酸やATP、クロロフィルなどの材料としても利用されます。
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