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【高校生物】エピジェネティック制御とは

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生物の遺伝子の発現調節の一つにエピジェネティック制御というものがあります。今回はこの制御機構について、高校生物で押さえておきべきことをまとめています。

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エピジェネティック制御とは

遺伝子の本体であるDNAや、DNAが巻き付いているタンパク質であるヒストンの修飾によって遺伝子の発現が制御されることエピジェネティック制御といいいます。

エピジェネティック(epigenetic)の対義語はジェネティック(genetic)で、ジェネティックとは「遺伝子の」という意味になります。つまり、ジェネティックとは遺伝情報である塩基配列の変化を意味しています。それに対しエピジェネティックとは「遺伝子外の」という意味になり、遺伝情報である塩基配列の変化なしに、遺伝子の発現調節を行うしくみになります。

具体的には、DNAのメチル化とヒストン修飾などがエピジェネティック制御にあたります。A、T、G、Cの塩基配列の変化なしに、遺伝子の発現調節を行っているのです。

エピジェネティック制御の例

エピジェネティック制御は、細菌・植物・動物などあらゆる生物で確認されている現象で、甲虫の大あごの大きさの違いなどが有名な例になります。

甲虫であるオオツノコクヌストモドキは、同じ種であっても幼虫期の栄養状態の違いによって大あごの大きさが異なる個体が存在していることが知られいています。これは、幼虫期の栄養状態によって、エピジェネティック制御の一つであるヒストンのアセチル化が関与していることが分かっています。

大あごの大きさの変化には、ヒストンのアセチル化の状態を決める酵素が関わっていて、ヒストンを脱アセチル化する酵素のはたらきを抑制すると、大あごが小さくなることが分かっています。

エピジェネティック制御の継承

このようなDNAやヒストンの修飾であるエピジェネティック制御は、体細胞分裂によって娘細胞に受け継がれたり、減数分裂によって生じる配偶子に受け継がれることもあることが分かっています。

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ヒストンのメチル化・アセチル化

エピジェネティック制御の代表例であるヒストン修飾(ヒストンのメチル化・アセチル化)について簡単に概要を説明しておきます。

クロマチン構造のメチル化とアセチル化

DNAはヒストンというタンパク質に巻き付いてヌクレオソームをつくっています。それがきれいに折りたたまれてクロマチン繊維を構成していますが、このとき、ヒストンにメチル基(CH3-)やアセチル基(CH3CO-)が結合することにより、クロマチン構造がほぐれやすくなるか、逆に引き締まってしまうのかが決まります。クロマチン構造がほぐれやすくなると転写が行われやすくなり、遺伝子の発現が促進されます。引き締まってしまうとRNAポリメラーゼがDNAに結合できず、転写が抑制されます。

詳しくは、

高校生物「クロマチン構造による転写の調節」クロマチン構造がメチル化されたりアセチル化されるってどういう意味?

で説明しているので、ぜひ参考にしてください。

エピジェネティック制御のまとめ

結局何を覚えておけばよいかというと、エピジェネティック制御とは、遺伝子の変化(塩基配列の変化)を伴わずに、遺伝子の発現を調節するしくみだということです。その他にも、覚えておきべきポイントを列挙しておきます。

  • DNAやヒストンの修飾によって遺伝子の発現が制御されている。
  • 遺伝子(塩基配列)は関係ない。
  • 甲虫の大あごの大きさの変化にはヒストンのアセチル化が関係している。
  • エピジェネティック制御の機構は細胞分裂などで娘細胞に受け継がれる。
  • ヒストンがメチル化されると転写が促進、アセチル化されると抑制される。

このくらいではないでしょうか。エピジェネティック制御は「がん細胞の増殖」に関与しているなど、生物界だけではなく医学界でも注目されている内容ですが、高校生物ではここぐらいまでの知識で十分です。

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