高校生物基礎。DNAの半保存的複製を証明した、メセルソンとスタールの実験を説明します。窒素の同位体を用いた実験の内容を理解します。
半保存的複製
DNAの複製方法は、もとのDNA鎖が鋳型となりそれに対応する新生鎖がつくられる半保存的複製になることは説明しました。保存的複製と分散的複製の違いも、あわせて説明しています。下記の記事を参考にしてください。
DNAが半保存的複製であることは、DNAが二重らせん構造になっていると提唱した、ワトソンとクリックによって予想されていましたが、これを実験で証明したのがメセルソンとスタールになります。
メセルソンとスタールの実験
メセルソンとスタールは、窒素の同位体である15Nを用いた密度勾配遠心法(等密度遠心分離)によって、DNAが半保存的複製を行うことを明らかにしました。
密度勾配遠心法とは、塩化セシウムによって密度勾配がある溶液をつくり、DNAの密度(比重)によって、DNAを遠心分離する方法です。難しいので簡単にいうと、15Nの重たい窒素を含むDNAは、下の方に遠心分離で現れ、軽い14Nを含むDNAは上の方に現れるといった方法です。
実験の手順は以下の通りです。
❶大腸菌を15Nを含む培地で培養
まず、窒素の同位体である15Nの培地で大腸菌を何世代か培養し、DNAに15Nのみを含む大腸菌を得ます。(これをG₀とする)
❷培養した大腸菌を14Nを含む培地で合計2回複製させる
培養した15NをDNAにもつ大腸菌を、14Nのみを含む培地で培養し、DNAを1回複製させます。(これをG₁とする)その後、もう1回複製させ、2回複製が終わった大腸菌まで得ます。(これをG₂とする)
❸密度勾配遠心法を行う
G₀~G₂を塩化セシウムを用いた密度勾配遠心法により遠心分離させると、G₀の15Nのみを含むDNAは密度(比重)が大きいので下の方に集まります。
G₁は、一方が15Nを含むDNA鎖、もう一方が14Nを含むDNA鎖で構成されているので、遠心分離させると中間の位置に集まります。
G₂は、一方が15Nを含むDNA鎖、もう一方が14Nを含むDNA鎖と、全て14NからなるDNAが存在するので、中間の位置と上の方にDNAが表れます。
この実験により、DNAが保存的複製、分散的複製ではなく、半保存的複製を行っていることが明らかになりました。
保存的複製・分散的複製ではない
メセルソンとスタールの実験で、DNAの複製が半保存的複製であることが明らかとなりましたが、ここで、保存的複製や分散的複製ではない理由も確認しておきましょう。
保存的複製だったら
DNAの複製が保存的複製だったら、密度勾配遠心法の結果は次のようになります。
分散的複製だったら
DNAの複製が分散的複製だったら、密度勾配遠心法の結果は次のようになります。
このような結果は実験で得られなかったので、これらの複製方法は否定されました。
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