免疫の学習で体液性免疫を学習しました。体液性免疫ではB細胞がつくりだす抗体により、抗原抗体反応が起こり抗原を排除しました。これと同じ反応で赤血球の凝集反応も起こります。この凝集反応の有無でABO式血液型が決まります。今日はABO式血液型を詳しく見ていきましょう。
ABO式血液型
ヒトの血液型の分類方法としてABO式血液型というものがあります。日本では最もポピュラーな血液分類方法で、血液型をA型、B型、AB型、O型に分類するものですが、分類の基準は赤血球の表面に存在する凝集原の種類やその有無にあります。
赤血球の表面に凝集原と呼ばれる抗原があります。凝集原は凝集原Aと凝集原Bの2種類があり、血液型がA型のヒトには凝集原Aが、血液型がBのヒトには凝集原Bが、血液型がAB型のヒトには凝集原AとBの両方が存在します。血液型がO型のヒトには凝集原AとBの両方が存在しません。
血液の液体成分である血しょう(血清)中には凝集素という抗体が存在します。凝集素には凝集素αと凝集素βの2種類があり、血液型がA型のヒトには凝集素βが、B型のヒトには凝集素αが、O型のヒトには凝集素αとβの両方が存在します。血液型がAB型のヒトには凝集素が存在しません。まとめると下の表のようになります。
存在する場所 | A型 | B型 | AB型 | O型 | |
凝集原 | 赤血球の表面 | 凝集原A | 凝集原B | 凝集原AとB | なし |
凝集素 | 血しょう(血清) | 凝集素β | 凝集素α | なし | 凝集素αとβ |
赤血球の凝集
それでは、赤血球の凝集反応を見ていきましょう。赤血球の凝集反応は、凝集原Aと凝集素α、凝集原Bと凝集素βが出会うと抗原抗体反応が起こり凝集します。
血液型は、凝集素αを含む血清であるB型標準血清(抗A血清)と、凝集素βを含む血清であるA型標準血清(抗B血清)に血液を混ぜ、凝集反応が起こるかどうかを調べることで判定されます。
A型 凝集原A |
B型 凝集原B |
AB型 凝集原A、B |
O型 凝集原なし |
|
B型標準血清(抗A血清) 凝集素αを含んでいる |
凝集 | ー | 凝集 | ー |
A型標準血清(抗B血清) 凝集素βを含んでいる |
ー | 凝集 | 凝集 | ー |
すべての血液型の赤血球と血しょう(血清)を混ぜたときの凝集の有無も表にしてみます。
A型のヒトの 赤血球 |
B型のヒトの 赤血球 |
AB型のヒトの 赤血球 |
O型のヒトの 赤血球 |
|
A型のヒトの 血漿(血清) |
ー | 凝集 | 凝集 | ー |
B型のヒトの 血漿(血清) |
凝集 | ー | 凝集 | ー |
AB型のヒトの 血漿(血清) |
ー | ー | ー | ー |
O型のヒトの 血漿(血清) |
凝集 | 凝集 | 凝集 | ー |
血液型と輸血
最後に輸血可能な血液の組み合わせを見ていきましょう。基本的に同じ血液型どうしの場合は互いに輸血が可能ですが、異なる血液間では可能な組み合わせと不可能な組み合わせがあります。
例えば、血液型がO型のヒトはA型、B型、AB型のヒトに輸血することができます。これは、O型のヒトの血漿には凝集素α、βどちらも含まれていますが、輸血するO型の血液に含まれている凝集素αやβは僅かであり、抗原抗体反応が起こりますが凝集までには至らないためです。なので多量の血液を輸血する場合ではないときは輸血が可能になります。
また、血液型がAB型のヒトは凝集素α、βを持っていないため、多量の輸血ではない場合はどの血液からも輸血を受けることが可能です。これも、輸血する血液中の凝集素がわずかだからです。輸血が可能かどうかを表にすると次の通りです。○は輸血可能、×は不可能を表しています。
受血者 | |||||
A型 | B型 | AB型 | O型 | ||
供血者 | A型 | ○ | × | ○ | × |
B型 | × | ○ | ○ | × | |
AB型 | × | × | ○ | × | |
O型 | ○ | ○ | ○ | ○ |
輸血の可能性は上の表のようになりましたが、現在は同じ血液型のヒトどうしの間でしか輸血は行われません。O型の血液はどの血液型にも輸血が可能ですが、他の型の血液の人にO型の血液を輸血すると、赤血球が壊れてしまうということがわかったからです。
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