高校生物基礎の顕微鏡に関する内容です。前回は「生物の多様性と共通性」について学習しましたが、これからからだを構成する小さなつくりを観察していきます。そこで必要となるのが顕微鏡の知識です。みんなが苦手とするミクロメーターのポイントも解説します。
光学顕微鏡
顕微鏡の操作方法などは、小学校・中学校と学習をしてきたので簡単におさらいする程度にしておきます。一応、顕微鏡の各部の名称や検鏡操作をおさらいしておきましょう。
光学顕微鏡の各部の名称
顕微鏡には、反射鏡からの光を使って観察する光学顕微鏡と、電子線を使って観察する電子顕微鏡がありますが、学校で取り扱うのは光学顕微鏡になります。光学顕微鏡の下図のつくりは最低限覚えておきましょう。
光学顕微鏡の操作手順・使い方
光学顕微鏡を使って観察を行います。以下の操作手順で観察しましょう。
- 直射日光が当たらない明るい水平な机の上に置く。
→失明する恐れがあるので、直射日光を当てないように注意する。 - 接眼レンズ、対物レンズの順に取り付ける。
→鏡筒内に空気中のほこりが入らないようにするため。 - 反射鏡を光源の方に向け視野を最も明るくする。
→低倍率(100倍程度)では平面鏡、高倍率や光量が不足する場合は凹面鏡を使う。 - ステージにプレパラートをセットし、クリップで固定する。
- 横から見ながら調節ねじを回して、対物レンズとプレパラートを近づける。
- 接眼レンズをのぞきながら調節ねじを回し、対物レンズとプレパラートを遠ざけるようにピントを合わせる。
→対物レンズとプレパラートの接触を防ぐため。 - しぼりを調節して像がはっきり見えるようにする。
→一般に、低倍率ではしぼり込み、高倍率では光量が不足するのでしぼりを開く。 - 観察する像が視野の中央に来るようにプレパラートを動かす。
→肉眼で見たときとは、上下左右が逆に見えるので動かし方に注意する。 - レボルバーを回し、対物レンズの倍率を上げる。
→高倍率ほど視野の範囲は狭くなり、明るさは暗くなる。焦点深度は浅くなる。
細胞の染色
細胞内部の構造物は、ふつう色を持たないので、目的とする構造体を染色液で染色して観察する。染色液には次のようなものがある。
- 酢酸カーミン溶液(酢酸オルセイン溶液)…核や染色体を赤色に染色する。
- ヤヌスグリーン溶液…ミトコンドリアを青緑色に染色する。
- サフラニン溶液…細胞壁を赤色に染色する。
- ニュートラルレッド…液胞を赤色に染色する。
プレパラートのつくり方
観察したいものをプレパラートにセッティングします。このとき、固定→解離→染色→押しつぶしという手順で試料を作成します。細胞分裂を観察する例でプレパラートのつくり方をレクチャーします。
細胞分裂を観察するには、細胞分裂を盛んにおこなっているところを観察しなければなりません。よく使われるのがタマネギの根です。先端の1cmくらいの部分の用意します。この部分には根端分裂組織があって、細胞分裂の観察に適しているからです。
固定
まずは、先端部分を固定します。固定とは、細胞が生きていたときと同じ姿のまま固めることです。これをやっておかないと、次の解離操作で細胞がぐちゃぐちゃになってしまうからです。また、染色操作のとき、染色しやすくなるという効果もあります。
固定には酢酸やカルノア液、ホルマリンなどを用います。これらの液に5分~10分ほど浸し、細胞を固定します。細胞を固定するとは、言い方を変えると細胞を殺すということです。したがって、固定を行った後は、細胞内の構造物が流動する、原形質流動という現象は起こらなくなります。
解離
次は解離です。解離とは、細胞どうしを接着しているペクチンという物質を溶かし、細胞一つ一つを離れやすくるという操作です。この後の押しつぶしで、細胞がほぐれやすくなるのです。
解離には60℃に温めた濃度3%のうすい塩酸を用います。
染色
「細胞の染色」で紹介した染色液を用い、細胞内の構造体を染色します。細胞内の構造体はほとんどが無色透明で観察しにくいからです。
押しつぶし
最後に行う操作が押しつぶしです。細胞が重なっていると観察しにくいので、先端部分をスライドガラスに乗せ、カバーガラスを気泡が入らないようにかぶせ、その上にろ紙をかぶせて押しつぶします。こうすることで、細胞を平面に並べることができピントを合わせやすくなるのです。
倍率と焦点深度
低倍率から高倍率に倍率を上げた場合、視野の範囲は狭くなり、明るさは暗くなる。そして焦点深度は浅くなります。焦点深度とは、ピントが合う範囲のことをいい、焦点深度が深いほどピントが合う範囲が広く、焦点深度が浅いほどピントが合う範囲が狭くなります。
ミクロメーター
顕微鏡の視野内で長さを測定するときには、ミクロメーターを使用して長さを測定します。接眼ミクロメーターと対物ミクロメーターの2つが登場しますので、それぞれの役割と、長さの計算方法、倍率が変化したときの長さの変化など、ポイントをしっかりと押さえましょう。下の記事に詳しい解説が載っているので確認してください。
顕微鏡の分解能
顕微鏡でいろいろなものを観察しますが、構造体の中でも大きさを知っておいた方がよいものがあります。また、顕微鏡で観察できる限界の大きさを分解能といい、光学顕微鏡と電子顕微鏡の分解能を覚えなくてはなりません。顕微鏡で観察できる構造体の大きさのポイントを押さえましょう。下の記事に詳しい解説が載っています。
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