高校生物基礎。遺伝子の発現に関する内容で、だ腺染色体の観察実験があります。実験の内容やポイントを説明します。また、パフの観察でわかる遺伝子発現の特徴も見ていきましょう。
だ腺染色体とは
ユスリカやショウジョウバエなどの双翅目(そうしもく)の幼虫のだ腺(だ液腺)細胞の核の中には、だ腺染色体とよばれる普通の染色体の100倍~200倍程度の大きさの巨大染色体があります。間期にも凝縮したひも状の染色体が見られ、非常に大きいので、染色体の観察やによく使われます。
また、だ腺染色体には、酢酸カーミン溶液や酢酸オルセインに赤色に染まる多数の横縞(よこしま)模様が見られ、その位置関係は染色体上の遺伝子の位置関係と対応しているので、染色体地図の作成など遺伝学の研究にもよく使われます。
だ腺染色体が巨大な理由
だ腺染色体がなぜこれほどまで巨大なのかというと、細胞分裂をしないのにDNAの複製を繰り返しているからです。そのため、染色体が分離せずに束になった状態になって巨大化しているのです。
相同染色体が対合した状態
その他にも、だ腺染色体は常に相同染色体どうしが対合した状態になっているので、見かけの染色体数は普通の染色体の半数になります。
対合とは、相同染色体どうしがくっついている状態をいいます。普通の染色体の場合、減数分裂の第二分裂前期に対合が起こりますが、だ腺染色体では常に対合した状態です。
だ腺染色体のパフ
だ腺染色体のを詳しく観察してみると、所々にパフといわれる膨らんだ部分が見られます。このパフでは、DNAの転写が盛んにおこなわれており、転写でできたmRNAが蓄積している部分になります。
つまり、このパフの部分にあるDNAの塩基配列が転写され、それに対応したmRNAがつくりだされ、その遺伝情報が発現していることになります。
だ腺染色体のパフの観察
ユスリカやショウジョウバエなどの幼虫のだ腺(だ液腺)細胞には、だ腺染色体があることは説明しました。これを観察する実験が行われます。
酢酸カーミン溶液や酢酸オルセイン溶液で染色すると、だ腺染色体にきれいな赤い縞模様が表れますが、パフの部分はこの縞模様が不鮮明に見えます。
メチルグリーン・ピロニン染色液での染色
メチルグリーンはDNAを青緑色に、ピロニンはmRNAを赤桃色に染色する染色液です。これで染色数すると、パフ以外のだ腺染色体全体は青緑色に、パフの部分は赤桃色に色が変わります。
これで分かることは、パフの部分にmRNAが沢山あることがわかります。つまり、パフでは盛んに転写が起こっているということです。その遺伝子が発現しているともいえます。
パフの位置の観察で分かること
パフの位置観察すると、その生物の成長段階に応じてパフの位置が変化することがわかります。これは、成長の応じて発現する遺伝子が変化するということを意味しています。成長段階に応じて、必要なタンパク質がつくりだされていることがわかります。
また、パフの中にいは膨らみが消え、しばらく成長が進んでからまた膨らんだりするパフもあります。これは、遺伝子が一度発現しても、遺伝物質であるDNAが無くならないことを意味しています。
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