生物の出現により地球環境が変化し、その環境に適応していった生物が発展していきます。今回は初期の生物から真核生物の出現まで学習します。
酸素の濃度の変化と生物の変遷
最古の化石の発見から、初期の生物は約40億年前ごろに出現したと考えられていますが、その後生物はどのように変化していったのでしょうか。まずは、初期の生物の代謝について学習し、その後は、地球の酸素濃度の変化を追いながら生物の変遷を見ていきましょう。
初期の生物は従属栄養生物か独立栄養生物か
初期の生物については、以下の2つの説があります。
- 従属栄養生物
原始の海に多量に溶け込んでいた有機物を取り込んで、それを分解することでエネルギーを取り出していた生物。乳酸菌のような嫌気性細菌だった。 - 独立栄養生物
何らかの化学反応の過程で放出されるエネルギー、あるいは太陽からの光エネルギーを利用することで有機物を合成する生物。硫黄細菌のような化学合成細菌や、紅色硫黄細菌・緑色硫黄細菌のような光合成細菌だった。
つまり、現在でも初期の生物が何だったのかわかっていません。いずれにせよ、解糖系やクエン酸回路、電子伝達系、カルビン・ベンソン回路などの代謝のしくみは、この頃に成立していたと考えられています。
初期の生物は次の2つのどちらか
・従属栄養生物…嫌気性細菌(乳酸菌など)
・独立栄養生物…化学合成細菌(硫黄細菌など)・光合成細菌(紅色・緑色硫黄細菌)
光合成細菌とシアノバクテリアの出現と酸素濃度の変化
初期の独立栄養生物は、硫化水素H2Sなどを酸化して二酸化炭素CO2を還元し炭酸同化を行っていました。また、光合成細菌も光エネルギーを使って硫化水素H2Sを酸化し炭酸同化(光合成)を行っていました。
約27億年前頃になると、大量に存在する水を分解して効率の良い炭酸同化(光合成)を行うシアノバクテリアが出現します。硫化水素は限られた環境にしか存在しませんが、水なら地球上の広い範囲に存在するので、シアノバクテリアは地球上のいたるところで繁栄します。約27億年前の地層から、マット状に群生した初期のシアノバクテリアによってつくり出されたストロマトライトも発見されています。
シアノバクテリアは光合成の際に酸素を放出します。まずは海洋中に存在した鉄イオンなどと酸素が結合し酸化鉄になり、海底に沈殿し縞状鉄鉱層(しまじょうてっこうそう)ができます。現在人類は、この酸化鉄を鉄鉱石として利用しています。
下のグラフは、地球の酸素濃度の変化と生物の変遷を表したものです。
好気性細菌の繁栄
シアノバクテリアによってつくり出された酸素ですが、最初のうちは鉄イオンと反応し酸化鉄として海底に沈殿していきましたが、約20億年前ぐらいから水中や大気中に蓄積され始めます。
酸素の濃度が増すにつれて、酸素を利用し有機物を二酸化炭素と水に分解し、エネルギーを効率的に取り出す好気性細菌が繁栄するようになります。
酸素濃度の変化と生物の変遷
・シアノバクテリアの繁栄→ストロマトライトや縞状鉄鉱層の形成
・酸素濃度の増加→好気性細菌の繁栄
真核生物の出現と膜進化説・共生説
ここまでの生物すべてが原核生物であったのに対し、約19億年前あたりから、藻類などの真核生物と思われる化石が発見されるようになっています。葉緑体をもち光合成を行う真核生物の出現で、海洋中の酸素と有機物が一層増加し、大気中の酸素もさらに増加していったと考えられています。
どうやって真核生物が誕生したかについては、ロバートソンが唱えた膜進化説とマーグリスが唱えた共生説が有力です。
- 膜進化説
細胞膜が細胞内部にくびれこんで細胞小器官ができた。
(例)核、小胞体 - 共生説
他の生物が細胞内に侵入して共生した結果、細胞小器官ができた。
(例)ミトコンドリア、葉緑体
ここは生物基礎でも学習した「細胞内共生」のお話です。ミトコンドリアと葉緑体は、異質二重膜でできていて、独自のDNAやリボソームをもち半自律的に増殖できることが共生説の証拠になっていましたよね。
・真核生物の出現…約19億年前頃の地層から藻類(真核生物)の化石が見つかる。
・膜進化説…ロバートソン。細胞膜が細胞内部にくびれこんで細胞小器官ができた。
・共生説…マーグリス。他の生物が細胞内に共生した結果、細胞小器官ができた。
コメント