共通テスト化学は理科科目の中でも受験者数が最も多い科目です。理系の生徒なら必須の教科になっています。今回の記事はこの共通テスト化学の勉強法についてまとめてみました。
化学で高得点を取ることの大切さ
共通テストの受験者数を理科の科目別にみていきましょう。大学入試センターの発表によると科目別の受験者数は以下の通りです。
- 物理:157,196人
- 化学:204,543人
- 生物:71,567人
- 地学:2,011人
化学は理科科目の中でも最も受験者数が多い科目になります。というのも、化学は物理や生物と内容が被る部分が多く、物理も生物も内容を深めるうえで絶対に必要な科目になるからです。高校の先生も絶対に化学を選択するように促してきますし、高校のカリキュラム上、化学の選択が必須になっている場合が多いです。実際の大学入試でも、化学の選択が必要な大学・学部ばかりになっています。
この理由から、大抵の理系選択者は「化学+物理」や「化学+生物」といった科目選択構成になっているかと思います。
共通テスト理科の平均点
次に平均点を確認しましょう。理科の平均点は以下のようになっています。
- 物理:62.42点
- 化学:60.57点
- 生物:61.36点
- 地学:48.58点
受験者数が少ない地学は置いておくと、化学の平均点が低いことがわかります。新課程の化学になって、共通テストでも2次試験で出題されるような難易度が高い問題が出題されるようになっています。暗記量も非常に多く、知識の根本からの理解も必要になってきています。しっかり勉強しておかないと高得点が取れないつくりになっています。
裏を返せば、国公立大学で2次試験を有利に戦うためには、共通テストの化学で高得点を取っておく必要があるのです。はっきりいって共通テストで高得点が取れていない場合、それよりも難易度が高い国公立の2次試験で合格点が取れることはあり得ません。共通テストでしっかりと高得点を取ることが、つまりは志望大学の合格に直結するのです。
また、化学は年度によって平均点に大きな差が生まれる科目でもあります。昨年の平均点が50点台だったとしても、今年は60点台になったりと、得点の上下幅が大きいのが特徴です。年度によって得点が振られないために、過去問の研究をしっかりと行い、弱点分野をつくらないようにすることが重要です。
化学の特徴「理論・無機・有機」
化学の科目の特徴は、物理ほど数学が必要なわけでもなく、生物ほど暗記量も多くないといったことでしょう。理解や暗記と計算のバランスがとれている科目になります。そして、学習する内容も「理論・無機・有機」と綺麗に3つの分野に分かれていることも特徴の一つです。
この3つの分野は全く関連性がないわけではありませんが、ある程度割り切って勉強することができます。もちろん基礎となる理論は、無機や有機を勉強するにあたってその知識が必要になります。
共通テストの化学で9割を取る勉強法
化学は「理論・無機・有機」の3つの分野に分かれますので、それぞれについて勉強法を確認していきましょう。勉強の順序としては、まずは理論化学を徹底的に勉強してください。この知識や理解が無機や有機の勉強につながってきます。
理論化学の勉強法
理論化学では、周期表や化学結合などの化学の根本的な知識を学びます。これから化学を学習するにあたって木の幹のようなところになります。まずはここをしっかりと教科書の隅々まで暗記してしまうくらいに勉強してください。
その次に計算です。物質量molの計算や酸・塩基、酸化・還元などの計算力は化学の問題を解き進めるにあたってなくてはならないものです。ここがおろそかな生徒ははっきりいってこの先は何も解けないでしょう。
そして、高得点を取るために必要なのが、習った公式や法則が、どのような条件下で、なぜ使えるのかということをしっかりと考えることです。一見スラスラと解けたように思えても、なぜここでこの公式や法則が使えるのかということ理解しておかないと応用問題でつまづいてしまいます。
無機化学の勉強法
無機化学では、いかに上手に知識をインプットし、頭の中で整理するかが重要です。化学にはいろいろな元素が登場しますが、その元素を網羅的に学習していくことになります。もちろん知識量も理論化学と比べるとグッと増加しますので、効率的に暗記していくことが必要です。
忘却曲線を利用して、計画的に知識の手入れを行うように日々取り組むことが重要です。1問1答のような短時間で活用できるポケット問題集などもすき間時間に有効です。また、単に知識だけを覚えていくのは大変ですので、資料集やインターネットで調べた画像など、ビジュアルとともにインプットすると記憶に残りやすくなります。
有機化学と比べると、重箱の隅をつつくような問題も散見されるので、ここは入試直前まで根気強く暗記していきましょう。
有機化学の勉強法
有機化学は、官能基など覚えることが非常に多い分野です。しかも、単に暗記しただけでは得点につながりません。暗記した内容と、他の暗記した内容を組み合わせて問題を推測していく問題が非常に多く、知識と知識の関連性が高い分野になります。
まずは、どういったときにその反応が起こるのかということをしっかりとマスターし、その知識と他の知識がどのようにつながっていくのか、その理屈をしっかりとマスターしていくことが重要になります。
どうしても、高校の履修上、有機化学は遅くに学習することになります。学校によっては受験直前まで新しい単元として学習することもあるようです。そのせいか、有機化学で大きく失点する生徒も多いのも事実です。学校で学習していなくとも、官能基を覚えたりすることは予習でも十分にできますので、攻めの姿勢で学習していってください。
9割取るための参考書や問題集はこれ!
共通テストで9割を取るためには、学習量もさることながら、いかに効率的に学習を進められるかがカギになります。また、2次試験も見据えた勉強を進めていくことが重要です。国公立を狙っているのであれば、2次試験対策を勉強の中心に持ってくるようにしてください。
2次試験の記述対策なども同時に行って行けば、深い知識を修得でき、共通テスト対策にもつながります。2次試験や私立の一般試験に向け照準を合わせた学習をし、共通テスト前には問題や時間配分に慣れるためにも、共通テストの過去問や予想問題集に取り組むようににしましょう。
『化学の新研究』『化学の新演習』
まず、化学に苦手意識がない場合は『化学の新研究』『化学の新演習』の2本で学習を進めていって問題はないでしょう。この2作は受験化学の中でも最難関の参考書・問題集になっており、東大や京大レベルの問題にも対応しています。
圧倒的なボリュームと、高難易度を両立している最高峰の参考書です。高校で学習する内容を逸脱する問題や解説も多いのですが、実際に最難関の試験では出題されることも多々あります。
『化学の新研究』を参考書代わりに、『化学の新演習』を問題集代わりに進めていけば最強の化学の受験勉強ができる事は間違いありません。しかし、かなりのボリュームになりますので、相当な期間を設定しておかないと受験に間に合わない可能性も出てきますので要注意です。
『化学 基礎問題精講』『化学 標準問題精講』
このシリーズも化学の問題集として定番の良書です。『基礎問題精講』でも実際の2次試験レベルの問題に対応できる内容に仕上がっています。『標準問題精講』までやり遂げられたのなら、共通テストでも軽く9割を超えるレベルになることは間違いありません。
それから、このシリーズの最大の特徴は、解説の多さです。通常、難易度が高い問題集の場合、基礎的な解説を大幅にカットすることで難易度を保っていますが、この問題集は、細部までしっかりと解説を行ってくれています。
注意したいのが『標準問題精講』です。これは『基礎問題精講』と対をなす問題集ですので、網羅性はありません。難易度の高い問題を丁寧に解説してくれることはありがたいのですが、これだけで受験勉強するのは少し恐怖を感じます。必ず、網羅性がある問題集とセットで使うようにしましょう。
『化学重要問題集』
おなじみの化学重要問題集です。高校の準教材として採用している高校も少なくありません。この問題集は、国公立大学の旧帝大レベルを受験する生徒にとっては定番のような問題集です。特徴は応用問題の網羅性です。2次試験に出てきそうな難易度が高い問題が網羅されています。解説が大幅にカットされている箇所もありますので、基礎が身についていない生徒にとっては苦労する問題集でもあると言えます。
受験生の大部分が使っているテキストですので、2次試験まで見据えて学習を進める場合は、安心して取り組める良書です。しかし、基礎問題はありませんので、基礎をしっかりと身に付けてから取り掛かることをお勧めします。
大学受験Doシリーズ
このシリーズはあっさりと短期間で大学受験勉強ができるところが魅力のテキストです。実際に共通テストや2次試験でよく出題される内容が、あっさりと説き組みやすいように説明されており、類題演習もできるようになっています。
しかし、このシリーズだけで9割得点は難しいかもしれません。化学が苦手な生徒はこの問題集で1~2か月かけて7割から8割の力を身に付けて、次の問題集に進むことをお勧めします。とにかく化学が苦手と思う生徒は手に取ってみてください。
シリーズは理論、無機、有機で1冊ずつ準備されており、1冊1か月かからない程度で学習を進めることができるのが魅力です。
化学の一問一答
隙間時間や知識の整理に効果を発揮するのが「化学一問一答【完全版】」です。模試や過去問で登場した知識の整理、通学時間帯での学習など、手放せない相棒にあること間違いありません。
また、一問一答といいながらも、あらゆる計算問題の演習にも使えます。これ一冊でかなりの学習ができるのが生徒の感想として多いです。是非、化学勉強に活用してください。
範囲が狭く薄い「化学基礎」
文系で国公立大学を受験しようとする生徒は、基礎理科の2科目の受験が必要になる場合がほとんどではないでしょうか。今回の記事は共通テスト「化学基礎」で9割を取る勉強法をお伝えします。
化学基礎の特徴は何といってもその範囲の狭さです。理系の化学の学習内容と比べると、その量は約1割~2割程度と言ってもいいのではないでしょうか。化学基礎で学習する内容は主に以下通りです。
章 | 単元 |
物質の構成 | 物質の成り立ち |
物質を構成する粒子 | |
イオン | |
化学結合と結晶 | |
物質の変化 | 物質量mol |
化学反応式 | |
溶液・濃度 | |
酸と塩基 | |
中和反応 | |
酸化と還元 | |
イオン化傾向と電池 | |
化学と人間生活 | 生活の中の化学 |
化学とその役割 |
この中でもポイントとなる単元は「化学結合」と「物質量mol」、「化学反応式」になります。ここの学習を乗り切れば、化学基礎の問題のほとんどを解けるようになってきます。
これ以外の単元では、もちろん化学を勉強するにあたっての基礎知識になる「物質の構成」は完ぺきにする必要があります。化学基礎で点数が伸びない生徒のほとんどが、最初の基礎知識をおろそかにし、完璧に覚えていないことが原因になっています。
共通テスト「化学基礎」の平均点
化学基礎の平均点の推移は以下の通りです。実施初年度は、旧課程の化学Ⅰからの移行で、出題範囲が狭くなったこともあり平均点は7割を超える水準になりましたが、2年目以降は6割弱程度で推移しています。今後も6割弱程度で平均点は落ち着くでしょう。
年度 | 2016年 | 2017年 | 2018年 |
平均点 | 26.77点 | 28.59点 | 30.42点 |
受験者数 | 105,937人 | 109,795人 | 114,863人 |
化学基礎を勉強するにあたっての注意点
化学基礎は文系の受験生が受験することが多い教科で、2次試験では理科科目が必要で無くなる受験生がほとんどではないでしょうか。理系で基礎2科目で受験する場合も同様で、基礎で受験している時点で、おそらく2次試験では必要ない場合が多いです。ということは、化学基礎は共通テストだけで必要な科目で、しかも50点満点と比率が低いです。
受験全体の中で化学基礎が占める割合は非常に小さなものになっています。重箱の隅をつつくような細かな学習は時間を使いますので、大雑把にざっくりと内容をつかみ、7割から9割取れるレベルまで仕上げたなら、他の教科の学習に焦点を絞りましょう。深追いは禁物です。
共通テスト「化学基礎」で9割を取る勉強法
先ほども述べたように重要となる単元は「化学結合」「物質量mol」「化学反応式」になります。この3つの単元をマスターすることで、化学基礎の学習が非常にスムーズになります。もちろん、最初の重要単元である化学結合をマスターするにあたって、物質の構成や原子、イオンなどの習得は必須です。学習の前半で登場するこれらの内容をしっかりと覚えるようにしましょう。
上記の重要ポイントをマスターすれば、あとはこれに上乗せされる知識や考え方を1つ1つ習得していくだけになります。「酸・塩基、中和」「酸化と還元、電池」を抑えれば9割得点に到達します。
化学結合
化学結合は、物質の化学的性質をつかむうえで非常に重要な単元です。文系の化学基礎のみならず、理系の化学でも、点数が非常に低い受験生のほとんどがここの学習がおろそかです。
化学結合は、大きく分類すると次の3つの結合になります。
- イオン結合
イオン結晶をつくる - 共有結合
分子結晶をつくるものと共有結合の結晶をつくるものに分けられます - 金属結合
金属結晶をつくる
これらの結合の仕方と、その結合によってつくられる結晶の物理的・化学的性質をマスターすることが非常に重要になってきます。この単元の学習が終了すれば、おおよその物質の化学的性質を予想することができるようになるでしょう。
物質量mol
化学がわからなくなる単元の筆頭ではないでしょうか。この物質量molでつまずく生徒が非常に多いです。ここで化学をあきらめる生徒が多く、化学嫌いを生み出す単元ともいえるでしょう。
化学の基本単位である物質量molをあきらめると、これ以降の計算問題はすべて解けなくなってしまします。ここが最初で最後の化学基礎の山になりますので、集中して一気に習得してしまいましょう。
物質量molとは個数のことです。例えば、鉛筆など12本で1ダースと数えますよね。時間だったら60分で1時間にしますよね。これと同じように、物質量molは6.02×1023個で1molとしているだけです。ただの個数を表す単位に過ぎません。ここの計算方法をマスターすれば化学基礎は乗り切ったようなものです。がんばってください。
化学反応式
化学反応式も非常に重要です。はっきり言って化学反応式を書けるようになることで、物質の量的関係がわかり、何対何で物質が反応するかがわかるようになります。前述した物質量molと化学反応式がわかれば、これ以降に学習する「酸・塩基・中和」や「酸化と還元」がしっかりと計算できるようになります。
ここまでの内容の習得に力を入れてください。そうすれば必ず9割得点できるようになるでしょう。
9割取るための参考書や問題集はこれ!
教科書をしっかりとマスターしていき、共通テストの予想問題種などで実戦対策をすれば9割得点できるようになりますが、もっと手っ取り早く9割得点につなげるためには、予備校の先生などが書かれている参考書を活用することをお勧めします。
「面白いほどとれる本」や「はじめからていねいに」などのシリーズの参考書を開いてみてください。非常にわかりやすく図やイラストを駆使してまとめてあります。どの参考書でも大切なことをしっかりとまとめられていますので、必要な知識、不要な知識が一目瞭然です。
共通テストはこれだけ!岡本富夫の化学基礎
非常にコンパクトにまとめられた参考書です。重要ポイントのみをコンパクトに説明してくれていますので、最速で化学基礎のポイントをつかめるようになります。非常に解説もわかりやすく、本当に化学が嫌いという方にお勧めの教材です。
過去問からの抜粋なども多く、身に付けた知識をすぐにアウトプットできるつくりも嬉しいです。このテキストで問題の考え方のポイントをつかみ、共通テストの予想問題集などで実戦を積めば、簡単に9割得点に結びつくでしょう。
鎌田の化学基礎をはじめからていねいに
鎌田先生のこの参考書も受験会では超有名な良書です。こちらも非常に薄い作りになっていて、必要な知識や問題の解き方を短期間でマスターすることができます。書店などで見比べてみて、自分に合ってそうなら購入してみてください。点数が上がること間違いありません。
実践問題集や予想問題集
参考書でさらっと基本を修得したら、あとは実戦あるのみです。河合や駿台、Z会、東進などあらゆる予備校が実践問題集や予想問題集を出していますので、それらを使用し時間配分や形式などに慣れていってください。
また、これらの問題集は解説が非常に丁寧で、間違えた問題や覚えていなかった知識などを間違いノートにまとめていくだけで、自分オリジナルの教材が出来上がります。
過去問も新課程になって3年分蓄積されましたので、予想問題集ではなく過去問題集も使えるようになっています。予想問題集がいいか、過去問題集がいいのかは好みによると思いますが、それぞれ長短所もあるのも事実です。
過去問は実際に共通テストで使われた問題ですので、本試験のレベルで学習できる点が長所です。短所は、同じような問題が出る可能性が低いということです。予想問題集の長所は、予備校が予想してつくった問題や、模試の巻き返しの問題を使っているので、今後共通テストで出題される可能性が高いということがあります。短所は、問題のセレクトに偏りがある場合があることです。不安な方は両方を活用してみるのもいいかもしれませんね。
【まとめ】化学基礎の勉強法
化学基礎はやるべきところをしっかりと学習すれば簡単に9割得点に到達できます。しかし、実際に難問や奇問が出題されることもたまにあります。多いのが濃度などに関する問題です。
受験での重要性を考えると、イレギュラーな問題対策に時間を使うよりも、より重要な英語や国語、数学の学習に時間を割くべきだと考えます。優良な参考書を使用し、最短時間で9割得点にもっていけるように是非この記事の内容を参考にしてみてください。
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