高校生物で学習する、卵割について説明します。今回はその中で基本となる卵の種類と卵割様式について見ていきましょう。
卵割の基本知識
受精卵から始まる体細胞分裂を発生といい、特に胞胚期までの体細胞分裂を卵割といいます。卵割で出生じた娘細胞は割球と呼ばれ、通常の体細胞分裂とは少し異なる性質を持ちます。通常の体細胞分裂と卵割の違いは、以下の3点です。
①割球は成長しない
通常の体細胞分裂では、娘細胞が間期のG1期で大きく成長し、母細胞と同じ大きさまで成長します。しかし、卵割では割球が大きく成長しないまま次の分裂が行われます。そのため生じる割球の大きさは次第に小さくなり、細胞数が増えても胚全体の大きさは変化しません。
②間期が短い
間期のG1期の間に成長する必要がないので、通常の体細胞分裂の間期と比べると短くなります。そのため、分裂速度が速くなります。
③同調分裂を行う
通常の体細胞分裂はランダムに行われますが、卵割ではそれぞれの細胞が同じ時期に分裂を繰り返します。これを同調分裂といいます。そのため、卵割では細胞数が階段状に増加していきます。
卵の構造
卵の構造も重要です。これから具体的に卵割を学習していきますが、卵の構造を知っていないとどこで何が起こっているのかわからなくなります。しっかり覚えましょう。
極体がついている方が動物極、その反対側が植物極になります。赤道面を境に、動物極側を動物半球、植物極側を植物半球と呼びます。また、動物極と植物極を結ぶ面での卵割を経割、動物極と植物極を結ぶ面に直交する方向での卵割を緯割ということも覚えておきましょう。
卵の分類
動物の卵は、発生に必要な卵黄の量や卵黄の分布状態で次の4つに分類されます。
- 等黄卵…卵黄の量が非常に少なく、卵黄が卵全体に均等に分布している。
(例)哺乳類、棘皮動物(ウニ、ヒトデ) - 弱端黄卵…卵黄の量がやや多く、植物極側に偏って分布している。
(例)両生類(カエル、イモリ) - 強端黄卵…卵黄の量が非常に多く、植物極側に偏って分布している。
(例)鳥類、は虫類、魚類 - 心黄卵…卵黄が卵の中心部分に局在している。
(例)昆虫類、甲殻類
卵割の様式
卵の種類により、卵割の様式が異なります。これは卵黄の量により卵割のしやすさが異なるからです。卵黄が多く分布する部分は卵割が起こりにくく、その結果偏って卵割が進む卵もあります。卵黄が少なく卵全体で卵割が起こる全割と、卵黄の量が多く部分的に卵割が起こる不等割があります。まずは、卵の種類と卵割の様式を一致させて覚えましょう。
等黄卵の卵割
等卵卵は、全体的に卵黄の量が少ないため卵割が全体で起こります。それぞれの卵割はすべて同じ大きさに分裂し、生じた割球の大きさもそれぞれ等しくなる等割になります。ウニの場合、3回目の卵割までは等割になり、それ以降は不等割になることも覚えておきましょう。詳しくはウニの卵割で学習します。
弱端黄卵の卵割
弱端黄卵は卵黄の量がやや多く、植物極側に偏って分布しています。卵黄は卵割の邪魔をするので、植物極側での卵割が進みにくくなります。その結果、生じた割球の大きさが異なる不等割になります。1回目と2回目の卵割は経割で等割ですが、3回目の卵割は緯割で、植物極側に大きな割球が現れます。詳しくは両生類の発生で学習します。
強端黄卵の卵割
強端黄卵は卵黄の量が非常に多く、植物極側に偏って分布しているので植物極側では卵割が起こりません。動物極側の一部だけがひび割れのように卵割します。この卵割が行われる部分を胚盤といい、胚盤部だけが卵割するので盤割といいます。
心黄卵の卵割
心黄卵は卵黄が中心部分に局在しているので、表面部分だけが卵割が起こります。最初のころは核分裂のみが行われ、細胞質分裂が行われないため多核の状態になります。ある程度核分裂が進むと、生じた核が表面近くに移動し、ここでさらに卵割が進みます。このような卵割様式を表割といいます。
【練習問題】卵割の種類
動物の発生について、以下の各問いに答えよ。
(1)次の文の( )に適する語を書け。
発生の初期に見られる細胞分裂を(① )といい、生じた細胞を(② )という。①はa通常の体細胞分裂と異なり、すべての細胞が同時に分裂する(③ )を繰り返します。また、①の様式は(④ )の量や分布状態により異なる。
(2)(1)の下線部aで、③以外の異なる点を2つ述べよ。
(3)下の表は、卵の種類と卵割の様式の違いをまとめたものである。空欄に適する語を書け。
【解答】卵割の種類
(1)①卵割 ②割球 ③同調分裂 ④卵黄
(2)・間期が短い。・割球が成長しない。
(3)①等黄卵 ②弱端黄卵 ③強端黄卵 ④心黄卵 ⑤等割 ⑥不等割 ⑦盤割 ⑧表割 ⑨哺乳類 ⑩両生類 ⑪鳥類 ⑫昆虫類
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