高校公共・政経「行政権の肥大化と行政改革のポイント・練習問題」です。現代の政治や経済を学ぶ上で、「行政権の肥大化」と「行政改革」は避けて通れない重要なテーマです。行政権の肥大化とは、行政機関の権限や役割が拡大しすぎて、非効率や国民の声が届きにくくなる問題を指します。一方で、それを是正するための「行政改革」は、行政の効率化や透明性を高めるための取り組みとして注目されています。
本記事では、行政権の肥大化がどのように起こるのか、そして行政改革がどのように進められているのかを簡潔に解説します。さらに、練習問題を通して理解を深め、入試や定期テストに役立つ知識を身につけましょう!
行政権の肥大化
20世紀初頭、政府のあり方が「夜警国家」から「福祉国家」へと変わっていった。このころ、政府の役割は急速に拡大し、社会の不平等是正のために、今でいう厚生労働省や国土交通省などの省庁が整備されていった。
- 夜警国家…国家は経済活動に干渉せず、国防・治安・外交などの最低限の活 動に専念するべきであるとし、小さな政府(安価な政府)を理想とした。
その結果、国会よりも各省庁の役人、つまり官僚の方が力を持ち始めてしまった。官僚に力が集まりすぎて、国会の力が弱ま っている。これが「行政権の肥大化」です。
行政権の肥大化による弊害
- 委任立法の増加…委任立法とは細かい部分を官僚につくってもらった法律です。立法作業は国会の仕事ですが、なぜ官僚が介入するのか。それは社会が複雑化しすぎて、議員の能力では法律の大枠しかつくれなくなってしまったからです。
- 内閣提出法案の増加…細部から大枠まで、すべて官僚がつくった法律が内閣提出法案です。1年間につくられる法律の80%以上が、この内閣提出法案です。
- 許認可の増加…許認可とは法律外の「規制」のことで、各省庁独自の権限となる。民間企業は各省庁から必要な許認可をもらわないと営業活動すら満足にできないのが現状です。
天下り
官僚は許認可の権限を使い、民間企業を縛りつける。すると 企業側は、許認可欲しさに官僚に対してゴマをする。そのゴマすりの極致が「天下り」というわけです。官僚は役所を退職後、大手民間企業に専務以上の役員待遇で再就職することが多いこの高級官僚の民間再就職を、天下りといいます。
行政の民主化
これらの弊害をなくすための「行政の民主化」の動きが進行中です。
行政の民主化に向けての取り組み
- オンブズマン制度…行政機関を監視し、改善勧告などを行う公職。地方では普及しているが、国では未制定。
- 行政手続法…許認可や行政指導に統一ルールを定める。(1993年)
- 情報公開法…地方の条例化より遅れたが、1999年よりスタート。
- 中央省庁等改革関連法…1998年に成立。これに基づき 2001年に1府12省庁体制に再編された。
1980年代の三公社(JR・NTT・JT)の民営化などにはじまり、行政をスリム化しようという試みが進んだ。1996年に独立行政法人制度が導入された。2000年代には特殊法人の統廃合、郵政民営化、公務員数の削減なども進んだ。
【練習問題】行政の肥大化と行政改革
【問1】( )に適語を入れなさい。
(1)2000年、( )事務は廃止されて、自治事務と法定受託事務となった。
(2)地方債の発行は、2006年から国との( )制となった。
【問2】次の問いに答えなさい。
(1)行政権が過度に強化されることを指す用語は何か?
(2)行政権の肥大化を防ぐために行われる改革の一つで、民間のノウハウを活用して公共サービスを提供する方法は何か?
(3)行政権の肥大化を抑制し、政府の効率化を目指して行われた改革の一つで、中央省庁の統合や再編を進めることは何か?
(4)行政改革を推進するために、政府の財政負担を軽減し、効率的な運営を目指して行われた公社の民間化は何と呼ばれるか?
(5)行政改革の一環として、政府の意思決定機関を分権化するために提案された政策は何か?
(6)行政機関の権限を適切に分散させるために、政府の役割を縮小し、民間の参加を促進する改革は何か?
【解答】行政の肥大化と行政改革
【問1】
(1)機関委任
(2)事前協議
【問2】
(1)行政権の肥大化
(2)民間委託
(3)中央省庁改革
(4)三公社民営化
(5)地方分権改革
(6)規制緩和
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