硫酸にはさまざまな性質がありますので、色んな化学変化で登場する水溶液になります。濃硫酸と希硫酸でも性質が異なりますので、しっかりと覚えていきましょう。
濃硫酸の性質
濃度が質量パーセント濃度で90%以上の硫酸の水溶液を濃硫酸といいます。密度も1.8g/cm³と大きくずしりとした水溶液です。水溶液ですが含まれる水が非常に少なく、ほとんど電離していませんので強酸とは考えません。濃硫酸には次のような性質があります。
不揮発性
濃硫酸の沸点は約300℃と高く気体になりにくい酸です。そのため、沸点が低い酸と加熱すると、塩酸やフッ化水素などを気体として取り出すことができます。
- 塩化ナトリウムに濃硫酸を加えて加熱する
NaCl+H2SO4→NaHSO4+HCl↑ - ホタル石CaF2に濃硫酸を加えて加熱する
CaF2+H2SO4→2HF↑+CaSO4
脱水作用
濃硫酸は、化合物に含まれるHやOHをH2Oの形で引き抜く脱水作用があります。スクロースやグルコースなどを脱水すると、後には炭素Cが残り黒くなるので炭化と呼ばれます。
- ギ酸に濃硫酸を入れて加熱する
HCOOH→CO+H2O - グルコースに濃硫酸を入れる
C6H12O6→6C+6H2O
吸湿作用
濃硫酸は湿気を取り除くはたらきがある酸性の乾燥剤です。発生した気体が酸性や中性の場合、濃硫酸を乾燥剤として使うことができます。塩基性の気体の場合には濃硫酸と反応してしまうので、乾燥剤として使えません。
- 酸性の乾燥剤
濃硫酸H2SO4
十酸化四リンP4O10 - 中性の乾燥剤
塩化カルシウムCaCl2 - 塩基性の乾燥剤
酸化カルシウムCaO
ソーダ石灰CaO+NaOH
また、濃硫酸はH2Sの乾燥に使えません。濃硫酸が酸化剤、硫化水素H2Sは還元剤としてはたらいてしまうからです。
酸化作用
濃硫酸を加熱したものを熱濃硫酸といい強い酸化剤になります。熱濃硫酸はCuやAgなどイオン化傾向が小さい原子とも反応しSO2を発生します。反応する金属はCu~Agまでです。
- 銅に濃硫酸を加えて加熱する
Cu+2H2SO4→CuSO4+SO2↑+2H2O
希硫酸
濃硫酸を水で薄めたものが希硫酸です。濃硫酸を水で薄めるときは大量の熱が出るため、水に濃硫酸を少しずつ加えて薄めます。
強酸性
濃硫酸は水が少なかったので電離しにくい状態でしたが、希硫酸にするとH2SO4が電離して強い酸性を示します。
希硫酸はイオン化傾向がH2より大きな金属と反応してH2を発生させます。
- Zn+H2SO4→ZnSO4+H2
硫酸の性質 練習問題
正しいものは〇、間違っているものは×と書け。
- 濃硫酸は希硫酸よりも強い酸性を示す。
- 塩化ナトリウムに濃硫酸を加えると塩素が発生する。
- グルコースに濃硫酸を入れると炭化が起こる。
- 濃硫酸はアンモニアの乾燥剤として使える。
- 熱濃硫酸は水素を発生させながら銅を溶かす。
- 希硫酸をつくるときは水に濃硫酸をゆっくりと入れる。
- 希硫酸はイオン化傾向がH2より大きな金属と反応してH2を発生させます。
解答
- ×濃硫酸はほとんど電離していません
- ×塩化水素が発生します
- 〇
- ×塩基性の気体の乾燥剤には使えません
- ×二酸化硫黄SO2を発生させます
- 〇
- 〇
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