無機化学の窒素化合物で登場するハーバー・ボッシュ法とオストワルト法は入試でもよく出題されます。今日はそれぞれの特徴と反応式まで詳しくみていきましょう。
ハーバー・ボッシュ法とは?
ハーバー・ボッシュ法とは、アンモニアNH3の工業的製法です。四酸化三鉄Fe3O4を主成分とする触媒を用い、窒素N2と水素H2からアンモニアNH3を合成します。
- N2+3H2⇄2NH3
このとき、高温・高圧化で行うことも覚えておきましょう。
アンモニアの実験室での製法
アンモニアは工業的にはハーバー・ボッシュ法でつくり出しますが、実験室では塩化アンモニウムと水酸化カルシウムを混合し加熱することで得られます。弱塩基の遊離反応です。
- 2NH4Cl+Ca(OH)2→CaCl2+2NH3↑+2H2O
水酸化カルシウムでなくとも強塩基だったら、弱塩基のアンモニアを遊離させることができますので、水酸化ナトリウムなどでも大丈夫です。
アンモニアの性質
ハーバー・ボッシュ法で得られたアンモニアNH3の性質もあわせて覚えましょう。
- 無色・刺激臭の気体
- 水に非常に溶けやすく弱塩基性を示す
- 塩化水素と反応し白煙を生じる
NH3+HCl→NH4Cl(白煙)
オストワルト法とは?
オストワルト法とは、硝酸HNO3の工業的製法です。ハーバー・ボッシュ法でつくられたアンモニアを原料にします。オストワルト法の流れは次のようになります。
- アンモニアNH3から加熱した白金Ptを触媒として一酸化窒素NOをつくる
- 一酸化窒素NOを酸化させ二酸化窒素NO2をつくる
- 二酸化窒素NO2を温水と反応させ硝酸HNO3をつくる
まとめてしまうと、アンモニアNH3と酸素O2から、硝酸HNO3と水H2Oが生じる反応になります。途中で登場するNOは再利用されて、全て硝酸に変わります。反応式でかくと次の通りです。
- 4NH3+5O2→4NO+6H2O
- 2NO+O2→2NO2
- 3NO2+H2O→2HNO3+NO
上記1~3の式をまとめると
- NH3+2O2→HNO3+H2O
となります。
硝酸の実験室での製法
実験室で硝酸HNO3をつくるには、濃硫酸H2SO4の不揮発性を利用します。
- NaNO3+H2SO4→HNO3+NaHSO4
【問題】ハーバー・ボッシュ法とオストワルト法の練習問題
- アンモニアの検出方法でHClと反応すると白煙が上がるが、何ができているか。化学式で答えよ。
- アンモニアの工業的製法を何というか。
- 硝酸の工業的製法を何というか。
- 3では触媒として加熱した何を使うか。触媒名を答えよ。
- 3ではまず触媒を用いてアンモニアを空気中の酸素と反応させ一酸化窒素を生じさせる。このときの反応式をかけ。
- 5のあと、さらに酸化させ二酸化窒素をつくり、それを温水にとかして硝酸を得る。この反応と5の反応をまとめて1つの式で表すとどのような反応式がかけるか。
【解答】ハーバー・ボッシュ法とオストワルト法の練習問題
- NH4Cl
- ハーバー・ボッシュ法
- オストワルト法
- 白金
- 4NH3+5O2→4NO+6H2O
- NH3+2O2→HNO3+H2O
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