大学入試小論文「新潟大学法学部(2020年度・前期)小論文解答例」労働問題です。改題となります。
<問題>現在、多くの民間企業で定年制が採用され、従業員は一定の年齢に達すると退職することとされている。もし仮に、法律により全ての民間企業に対して定年制の廃止を義務付けることが提案された場合、あなたはどのように考えるか。このような提案のメリット・デメリットを踏まえた上で、あなたの考えを論じよ。
非正規雇用者の増加による社会的影響の解答例
私は非正規雇用者が増加することで起こる社会的影響は2つあると考える。
1つ目は誰でも働きやすい社会になるということだ。非正規雇用者は自分の都合に合わてシフトを組めるため働きやすい。例えば、主婦の場合フルタイムで働くことは無理でも、短時間なら働ける人にとっては非正規雇用制度が合うだろう。また、学生の場合、勉強の合間を縫って働くことが出来、早いうちから社会の成り立ちを働くことで学ぶことができるという点は非正規雇用ならではの特徴だ。
2つ目は、経験を幅広く養うことができる点だ。非正規雇用は短期間の仕事や職種も多いので、短期間で多くの経験を培うことができる。企業側も非正規雇用者を雇う理由は、即戦力となる人材を求めているからだろう。そういう人材に適する人は、やはり多岐にわたる技能を培って来た人だ。だから多くの経験を積むことができ、かつ企業が求める人材の確保できるという点で雇う側にとっても雇われる側にとってもメリットは多い。
非正規雇用長期契約ではないため人材育成が難しい。しかし、現在、政府は特に女性が働きやすい社会へと促されている。そういう社会の中で非正規雇用が融通が利くため、手を伸ばしやすいシステムだ。よって、私は非正規雇用者が増加することで、誰でも働きやすい環境が生まれると考える。
非正規雇用者の増加による社会的影響の小論文の講評(一部抜粋)
深い考察が必要です。
1つ目の誰でも働きやすい社会については、非正規雇用者が柔軟な労働条件を享受できる一方で、不安定な雇用や社会保障の不足による問題も指摘されています。論文ではこれらの側面に触れられておらず、よりバランスの取れた視点が求められます。
2つ目の経験を広げる点については、確かに非正規雇用は多様な経験を提供しますが、同時にスキルやキャリアの構築が難しい側面もあります。雇用主が非正規雇用者に投資を行わないため、将来的な安定的なキャリアパスが不透明なことも考慮すべきです。
最後に、女性が働きやすい社会への促進は重要ですが、非正規雇用がすべての労働者にとって理想的な状態を提供できるかどうかについて検討が必要です。特に女性が抱えるキャリアの途中での雇用不安や経済的なリスクに焦点を当てることが重要です。
総じて、より広範かつ対立する意見を考慮に入れ、社会的な側面を総合的に論じることが論文の深化に寄与するでしょう。
非正規雇用者の増加による社会的影響の小論文の添削(一部抜粋)
この論文は、「正規雇用者の特徴・メリット」を書いている論文です。「社会的影響」を論じなければなりません。つまり、「働きやすい社会になる」とありますが、それが、どのように影響するかを書かなければなりません。例えば、その反面、賃金が安く、経済的に不安定で、結果として国や地方の財政が減り、社会保障制度が立ち行かなくなる。
<話し言葉×>
無理でも→難しくとも
<修正>
非正規雇用は短期間の仕事も多い。また職種も多い。→ 非正規雇用は短期間の仕事やその職種も多い。
労働環境の事実確認
- 非正規雇用者は自分の都合に合わてシフトを組めるため→アルバイトはそうだが、非正規の契約社員は会社の都合です。
- 企業側も非正規雇用者を雇う理由は、即戦力となる人材を求めているからだろう。→即戦力になる人材は、高い給与で正規で雇うのでは?現在は、人材不足で、いい条件でないと人は集まりにくい。
- 非正規雇用長期契約ではないため人材育成が難しい。→ 「技術が身につく」と論じてきている点と矛盾するのでは?
全体的な流れは、いいのだが、今回は、「主題からズレている点」「一般論的すぎる(厳しく言えば、浅はか)」「結論が結論になっていない」という3点を今後意識していきましょう。
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