転写されたmRNAの3つの塩基配列であるコドンと、それに対応するアミノ酸の関係を調べた実験、ニーレンバーグとコラーナの実験を見ていきましょう。
コドンと遺伝暗号
タンパク質は、多くのアミノ酸がペプチド結合して構成されています。タンパク質を構成するアミノ酸は20種類あり、これがmRNAの3つの塩基配列(トリプレット)により指定されます。このmRNAの3つの塩基配列をコドンといいます。
例えば、UAUならチロシン、AGAならアルギニン、CUUならロイシンといった感じでコドンによりアミノ酸が指定されます。mRNAの塩基は、A(アデニン)、U(ウラシル)、G(グアニン)、C(シトシン)の4種類で、これが3つ組み合わさってコドンとなりますが、コドンの種類は、4種類×4種類×4種類=64種類あります。これに対してアミノ酸の種類は20種類なので、1つのアミノ酸を2~6種類のコドンが対応している場合があります。
アミノ酸の1種であるロイシンは6つのコドンが対応しています。UUA、UUG、CUU、CUC、CUA、CUGはすべてロイシンを指定するコドンになります。このように、複数のコドンが重複して1つのアミノ酸を指定することを、遺伝暗号の縮重といいます。
また、アミノ酸を指定するコドンは、3番目の塩基が変わっても同じアミノ酸を指定することが多いということも覚えておきましょう。
ニーレンバーグの遺伝暗号の解明
アメリカの生化学者であるニーレンバーグは、1961年に人工的に合成したmRNAを用いてタンパク質を合成する実験を行いました。タンパク質合成に必要な酵素やアミノ酸、リボソーム、tRNAなどを含む液に、U(ウラシル)だけでできているmRNA(UUUUU…)を加えると、フェニルアラニンのみが結合したペプチド鎖が生成されました。
このことから、塩基配列UUUはフェニルアラニンを指定する遺伝暗号であることが判明しました。ちなみにフェニルアラニンを指定するコドンは2通りあり、UUUとUUCとなっています。
コラーナの遺伝暗号の解明
アメリカの生物学者コラーナは、2つの塩基が交互に繰り返す塩基配列を持つRNAが、2種類のアミノ酸を指定していることを突き止めました。
A(アデニン)とC(チミン)が交互に繰り返されるACACACACAC…のmRNAを用いてタンパク質合成を行わせたところ、トレオニンとヒスチジンが繰り返されたポリペプチド鎖が合成されました。ACACACAC…の塩基配列から生じるコドンは、ACAとCACの2種類で、いずれかがトレオニン、もう一方がヒスチジンを指定していると考えられます。
次に、A(アデニン)とC(チミン)がCAACAACAACAA…と繰り返されるmRNAを用いてタンパク質合成を行わせると、グルタミンのみのペプチド鎖、アスパラギンのみのペプチド鎖、トレオニンのみのペプチド鎖が生じました。CAACAACAA…の塩基配列から生じるコドンは、CAA、AAC、ACAの3種類あり、このうちのどれかが、グルタミン、アスパラギン、トレオニンを指定していることになります。
両方の実験に共通するアミノ酸はトレオニンで、両方に登場するコドンはACAだけなので、ACAのコドンがトレオニンを指定する遺伝暗号だと解読されました。
このような実験を繰り返し、1966年には、64種類すべてのコドンが解明されました。
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