▶ YouTubeで授業動画配信中

【高校地理】ヨーロッパの農業の特色まとめ

ヨーロッパの農業の特色アイキャッチ画像 地理歴史
スポンサーリンク

【高校地理】ヨーロッパの農業についてまとめています。イギリスでは18世紀になると、大地主が共有地や中小地主の土地を併合し、それを資本家が借りて企業的大規模農牧業を営むようになります。現代になると、ヨーロッパは、地形や気候の多様性が豊かな農業活動を支え、多種多様な農作物や農業形態が見られる地域です。伝統的な農業が受け継がれる一方で、EUの政策や国際市場の影響を受け、現代的な農業技術や経済活動との融合も進んでいます。

スポンサーリンク

ヨーロッパの農業まとめ

ヨーロッパの農業地域区分

種類 混合農業 酪農 地中海式農業
国・地域 アルプス山脈より北 デンマーク、オランダ アルプス山脈より南(イタリアなど)
内容 穀物・飼料作物の栽培と家畜の飼育を組み合わせた農業 乳牛を飼育 夏の乾燥に強い作物をつくる農業
農作物など ライ麦、小麦、じゃがいも バターやチーズを生産 ぶどう、オリーブ。冬は小麦
  • フランス…EU最大の農業国。小麦の生産量・輸出量は世界有数(どちらも5位)。
  • オランダ…園芸農業が盛んで、酪農によりチーズなどを生産。
  • イタリア…地中海式農業は、ぶどう、オリーブは世界有数の生産。
スポンサーリンク

ヨーロッパの農業革命

農業機械の普及や技術の発展にともない労働生産性も向上し、少ない農民で多量の収穫を上げ、自給的農業から商業的農業に変わってきた。さらに交通機関の発達とともに植民地から安価な農産物が大量に輸入されると、ヨーロッパの農業は大規模化するか、穀作などの耕種農業・肥育牧畜業・酪農に、また内耕地を拡大した園芸農業や養豚業・養鶏業などに特化していった。これら全体的な変化を農業革命と呼んでいる。

  • 商業的穀物農業…大規模で小麦栽培に特化した農業形態であり、肥沃な土壌と結びつくことが多い。
  • 企業的放牧…ブラジルやオーストラリア北東岸などが該当。

農業革命がとくに進んだイギリスや北フランスでは、150~300haに及ぶ大農場経営の借地農が、大型機械を用い、肥料を大量に投下して、小麦・大麦・トウモロコシなどを栽培して、高い労働生産性を上げている。旧来の農村は人口の流出によって、廃村となるか、非農業の都市住民の二次的家屋が多い。

さまざまな農業地域と気候

農業革命の中核地域は北西ヨーロッパで、西岸海洋性気候と大陸性気候がせめぎあっている。アイルランドやイギリス・フランスの西部・オランダ・デンマークは典型的な冷夏暖冬の西岸海洋性気候で、北大西洋海流に暖められた低気圧が接近して 通年降雨もあり、穀作には適さないが、牧草がよく育ち酪農に最適である。

  • イギリス…商業的混合農業と酪農が中心。
  • フランス…自作農中心で西欧最大の農業国。
  • オランダ…ポルダ ー(干拓地)で酪農・園芸農業。
  • アルプス山脈…酪農および移牧がさかん。
  • イタリア・スペイン…地中海式農業が中心。

都市近郊では生乳、遠い地方ではチーズやバター生産に特化し、カマンベールのような村の名に由来する有名な銘柄チーズも多い。農家の多くは家族経営であるが、デンマークなどが自作農であるのに対して、フランス西部やアイルランドでは零細な小作農が多く、地域的に土地所有の差がみられる。ワイン同様に、原産地名が国名、地方名、村名と狭くなるほど品質管理が容易であるため、よりブランド価値が高く評価される。

企業的大農場

近年、大地主から狭い農地を借りる小作農は減少し、大規模な土地を多くの地主から借り集めた借地農が増加して、数十ヘクタールの、なかには数百ヘクタールに達する大農場が誕生している。

  • 企業的大農場…農耕機械の利用によって労働生産性が高まり、安価で大量の農産物の生産が行なわれている。

内陸部の農業

内陸では、夏季に低気圧がはいって降水量も多いが、東に向かうほど冬季のシベリア高気圧の影響が強く、寒暖の差が激しくなり、大陸性気候となって、冬季の乳量が低下してハムやソーセージを生産する肥育牧畜業が中心となる。

スポンサーリンク

ヨーロッパの農業の課題

ヨーロッパの農業の課題図解
1.気候変動の影響
・温暖化に伴う異常気象(干ばつ、大雨、気温上昇)が作物の収穫量や品質に影響を及ぼしている。
・地中海沿岸では乾燥化が進み、農業用水の確保が困難になっている。

2.高齢化と労働力不足
・農業従事者の高齢化が進み、次世代の担い手不足が深刻化している。特に地方部では過疎化が進行している。
・季節労働者の確保が課題であり、移民政策や労働条件の改善が求められる。

3.経済的圧力
・国際競争の激化により、生産コストを抑えつつ収益を確保する必要がある。
・小規模農家が市場競争に勝てず廃業するケースが増加。

4.環境負荷の軽減
・化学肥料や農薬の使用が土壌や水質汚染の原因となり、環境保全と収量の両立が求められている。
・モノカルチャー(単一栽培)の拡大により、生物多様性の損失が懸念されている。

5.政策の調整
・EU共通農業政策(CAP)の影響が大きいが、各国の事情に合わない政策や補助金配分の不公平が問題視されている。
・環境規制や貿易政策の変化が農業経営に影響を及ぼす。

EU共通農業政策(CAP)
欧州連合(EU)加盟国において共通して実施されている農業政策です。EU予算を財源としており、食料の安定供給や農業者の所得補償、環境保全、農村振興などを目的

6.地域間の格差
・西欧の先進的な農業と、東欧の伝統的な農業との間で生産性や収益性に大きな差がある。
・インフラや技術導入の遅れが格差を広げている。

これらの課題に対応するため、農業技術の革新や持続可能な農業への転換が重要となっています。また、地域ごとの特性を生かした政策や、環境と経済のバランスを取った農業のあり方が求められています。

コメント

テキストのコピーはできません。