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宇都宮大学農学部(令和2年度)の小論文解答例「昆虫の減少原因と農業への影響」

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【令和2年度】宇都宮大学農学部生物資源科学科の小論文解答例となります。近年、世界的に昆虫の個体数が減少しているという報告が相次いでいる。特に、農業と密接に関わるミツバチなどの花粉媒介昆虫(ポリネーター)の減少は、食料生産や生態系の維持に深刻な影響を及ぼす可能性が指摘されている。本記事では、宇都宮大学農学部(令和2年度)の小論文課題「昆虫の減少原因と農業への影響」に基づき、その背景や要因、農業への具体的な影響について考察し、持続可能な農業のために求められる対策について解答例を交えながら紹介する。

【問題】(略)昆虫が減少している原因と昆虫の減少が農業に及ぼす影響、更にその対策について、あなたの考えを800字程度で述べなさい。
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宇都宮大学農学部生物資源科学科の小論文解答例【令和2年度】

近年、昆虫の減少が深刻な問題となっている。その主な原因の一つとして、農業における過剰な防虫剤の使用が挙げられる。確かに、農作物を害虫から守ることは重要であるが、一方で防虫剤の使用は農地に生息するあらゆる昆虫に影響を及ぼす。農業の発展とともに、効率的な収穫を求めて化学農薬の使用が増加したが、それに伴い、益虫を含む多くの昆虫が減少している。

昆虫の減少が農業に与える影響の具体例として、ミツバチの減少が挙げられる。ミツバチは、作物の受粉を助ける重要な役割を担っている。特にスイカやイチゴ、リンゴなどの作物はミツバチによる受粉が欠かせない。しかし、ミツバチが減少することで、これらの作物の受粉が滞り、生産量が大幅に低下する。実際、アメリカや中国ではミツバチ不足により、農家が手作業で受粉を行う例も報告されている。しかし、人の手で受粉を代替するには膨大な時間と労力がかかるため、現実的ではない。このように、昆虫の減少は農業の持続可能性を脅かす深刻な問題となっている。

では、昆虫の減少を抑制しながら農業を維持するためには、どのような対策が必要なのか。私は、農薬や防虫剤の使用を最小限に抑えた有機栽培を推進することが有効な解決策であると考える。有機栽培では、化学農薬の代わりに自然由来の農薬を使用する。例えば、木酢液やニームオイルといった天然成分を活用することで、害虫の駆除を行いながら土壌や環境への負担を軽減できる。また、害虫の天敵を活用する「生物的防除」も有効な手段である。例えば、アブラムシを捕食するテントウムシを意図的に放つことで、害虫の増殖を抑えることが可能である。

さらに、農業の在り方そのものを見直す必要がある。例えば、農地の単一栽培を避け、多様な作物を組み合わせる「混作」や「輪作」を導入することで、特定の害虫が異常繁殖しにくい環境を作ることができる。また、都市部では「屋上農園」や「垂直農業」など、新たな農業の形態が広がっている。これらの手法を活用することで、自然環境への負担を抑えつつ、持続可能な農業を実現することが可能となる。

このように、防虫剤の過剰使用を見直し、有機栽培や生物的防除、農業の多様化を進めることで、昆虫の減少を防ぎながら持続可能な農業を実現できる。昆虫と農業は密接に関わり合っており、一方の崩壊はもう一方の危機につながる。次世代に豊かな自然と安定した農業を引き継ぐためにも、私たちは今こそ農業の在り方を再考し、環境と共生する持続可能な農業へと移行すべきである。

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昆虫減少の影響の例

農業以外にも、昆虫の減少は、生態系や人間社会に多大な影響を及ぼします。以下はいくつかの具体的な例です。

1.生態系のバランスの崩壊
昆虫は食物連鎖の重要な一部であり、多くの動物にとって主要な食料源です。昆虫が減少すると、これらの動物の個体数も減少し、さらなる生態系の崩壊を引き起こします。

<例>
鳥類:特に昆虫を主食とするツバメやカッコウなどの鳥の数が減少。
両生類・爬虫類:カエルやトカゲも昆虫を餌にしているため影響を受ける。

2. 受粉の減少による農作物の生産低下
ハチやチョウなどの花粉媒介昆虫(ポリネーター)が減少すると、多くの果物や野菜の受粉が難しくなり、農作物の収穫量が低下します。

  • 例:ミツバチの減少により、リンゴ、ブルーベリー、アーモンドなどの収穫量が減少。
  • 例:コーヒーやカカオの生産にも影響し、価格上昇のリスク。

3. 害虫の天敵の減少による農業被害の増加
捕食性昆虫(例:テントウムシ、カマキリ)が減ると、アブラムシやイモムシなどの害虫が増加し、農作物への被害が拡大します。

  • 例:天敵の減少により、農薬使用量の増加が必要になり、環境負荷が高まる。

4. 分解者の減少による有機物の蓄積
ハエや甲虫などの昆虫は動植物の死骸や糞を分解する役割を担っています。これらが減少すると、有機物の分解が遅れ、環境衛生が悪化します。

  • 例:動物の死骸の分解が進まず、病原菌が繁殖しやすくなる。
  • 例:土壌の栄養循環が停滞し、農業生産性が低下。

5. 医薬品・科学研究への影響
昆虫は医薬品や生物工学の研究に重要な役割を果たしています。昆虫の減少により、未知の医薬品開発の可能性が失われる可能性があります。

  • 例:ヒルガオハムシ由来の化合物が抗がん剤の研究に活用されている。
  • 例:シルク(蚕の繭)やカイコの研究は医療素材開発にも利用されるが、カイコの生息環境悪化が進むと影響を受ける。

6. 文化・経済への影響
昆虫は食文化(昆虫食)、工芸(絹)、観光(ホタル観賞)などにも関係しています。昆虫が減少すると、これらの伝統や産業にも打撃を与えます。

  • 例:昆虫食文化が発展している地域では、食料資源の減少につながる。
  • 例:ホタル観賞地の減少により観光収入が減少する。
まとめ
昆虫の減少は単なる生物学的な問題ではなく、農業、経済、文化、環境衛生など多方面に影響を及ぼします。特に、受粉や害虫駆除などの「生態系サービス」が失われると、食料供給や人間の生活にも直接的な悪影響をもたらします。そのため、昆虫保護のための対策(農薬削減、生息地保全など)が急務となっています。
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