【2021年度】山梨大学工学部・メカトロニクス工学科(総合型選抜Ⅱ)の大学入試小論文解答例です。問題は、一部改題としています。
【問題】プラスチックの生産から廃棄までに生じる諸問題、およびそれらに対する具体的な対策について説明しなさい。
【改題】バイオプラスチックを製造し、使用することの利点と問題点を説明しなさい。
山梨大学の大学入試小論文【2021年度・工学部改題】
私はバイオプラスチックを製造・使用することは、クリーンな環境をつくることにつながると考える。
その理由の一つとして、生分解性プラスチックが微生物によって分解される点がある。近年、通常のプラスチックが分解されきれずに残る、マイクロプラスチックが問題となっている。海などを漂い、魚を介して人間にも被害を及ぼしている。しかし生分解性プラスチックならば時間をかけて分解されるため、誤って落としてしまった場合でも安心だ。
また、バイオマスプラスチックはCO₂排出量を抑えられる点がある。原料となるサトウキビなどは、成長する際にCO₂を吸収している。そのため、バイオマスプラスチックは焼却時にCO₂が発生しても、全体的に見るとCO₂の増減がないのだ。さらに通常のプラスチックと違って、製造に石油を使用していない点も挙げられる。結果として、限りある資源の削減につながるからだ。
しかし問題点もいくつかあると考える。まずは原料についてだ。バイオマスプラスチックは、製造にトウモロコシなどを大量に必要とする。しかし私たちもこれらの食料を日常的に食べるため、全てをプラスチックの製造に回すわけにはいかない。その兼ね合いが難しいと考える。
次に、生分解性プラスックについて十分に理解されていない場合だ。生分解性プラスチックは、適切でない環境や可燃ごみとして処理されると、一般的なプラスチックと同じようにCO₂を排出すると聞いたことがある。
このような問題の解決策として、企業の呼びかけが必要だと思われる。「環境に優しいプラスチック」とだけではなく、処理するときの注意点などを詳しく説明するべきだ。環境問題は個人だけでなく世界全体の問題であるので、十分に注意を払った上で国もバイオプラスチックの導入を促すと、より良いと思う。そのためには、トウモロコシなどの食用と原料用の割合を検討することも必要だと考える。
山梨大学の大学入試小論文【2021年度】の講評
バイオプラスチックの利点と問題点を明確に述べています。特に生分解性とCO₂排出の面での利点を良く説明しています。
<よりよい論文のために>
ただし、問題点についてもっと具体的な情報が欲しいです。たとえば、原料の競合や適切な処理方法に関する具体例が挙げられていれば、議論がより深まったでしょう。また、解決策として企業の役割を強調していますが、個人の責任も重要であることが示唆されるとよりバランスが取れるでしょう。
■原料の競合や適切な処理方法に関する具体例についての例文
例えば、バイオプラスチックの原料としてトウモロコシが広く使用されているが、これは食料としての需要と競合する可能性がある。トウモロコシの需要が高まると、食料価格の上昇や食糧安全保障への懸念が生じる。また、適切な処理方法に関しては、生分解性プラスチックが適切な環境でない場所で廃棄されると、効果的な分解が行われず、むしろ環境に負荷を与えることになる。生分解性プラスチックが海洋に流出し、海洋生物に影響を及ぼす可能性があるわけだ。
■解決策として企業の役割を強調していますが、個人の責任も重要であることが示唆への例文
解決策として、企業の取り組みだけでなく、個人の行動も重要だ。例えば、企業は環境に配慮した製品を提供する一方で、個人はリサイクルや適切な廃棄方法を実践することで、バイオプラスチックの持続可能な利用を支援できる。また、消費者が環境に配慮した選択をすることで、企業に対して環境への取り組みを促す役割も担うことにつながる。そのため、バイオプラスチックの利用においては企業と個人が連携し、持続可能な社会への貢献が必要である。
バイオプラスチック利用のメリットとデメリット
バイオプラスチック利用のメリットとして
- 化石燃料の使用削減(植物由来のプラスチック素材のもので生成可能)
- 二酸化炭素の排出削減(原料となる植物の光合成によって二酸化炭素を吸収)
- 環境への負荷が低い(短期間で生分解される)
バイオプラスチック利用のデメリットとして
- 原料不足の懸念(原料需要の拡大するうえで食料のほか、他の原料との競合の発生)
- コストが高い
- 100%生分解性でない製品が多い(使用後の処理がめんどう)
が挙げられる。
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